Nevis etal. (1995)

Edwin C. Nevis, Anthony J. DiBella, and Janet M. Gould (1995), "Understanding Organizations as Learning Systems", Sloan Management Review, Vol.36, No.2, pp.73-85, Winter.

概要

この研究ではNevisらは組織がよりよい学習システムになるのを助けることを目的とし,インタビューや調査から,組織における学習システムの現状を診断するための枠組みとして,7つの学習の指向,10の促進要因の2つのパートからなるモデルを提案している.このモデルによる診断から,組織は学習システムの改善をするさいの改善ポイントを把握することができるようになった.

組織学習プロセスモデル

Nevisらによれば,組織学習プロセスは3つのステージからなるとされている.

  • knowledge acquisition:スキル,インサイト,関係の発展/創造
  • knowledge sharing:学習されてきたことの普及(dissemination)
  • knowledge utilization:新しい状況に対して一般化され広く利用できるようなる学習の集大成(統一,integration)

ここでNevisらのいう知識(knowledge)とは情報(information)以上である.知識には情報の解釈や意味づけが含まれており,経験者の暗黙知のような無形資産を含む.Nevisらは従来の研究はknowledge acquisitionに着目したものが多いが,組織学習研究はプロセスにおけるすべてのステージに関心を持たなければならないと主張する.

研究方法

Nevisらは組織が学習システムであるかどうかをテストするための枠組みを(1)学習の指向(learning orientations),(2)促進要因(facilitation factors)の観点から明らかにしているが,この研究は以下のフェーズからなされている.

  • 1st phase:Motorola,Mutual Investment Corporation (MIC),Electricite de France (EDF),Fiat Auto Companyの4社に対してフィールド観察(field observation)をした.U.S./European,senior management/lower employeeからそれぞれ1つずつ選択.
  • 2nd phase:学習システムとしての望ましい組織を記述するクリティカルな要因の2パートモデルを構築した.
  • 3rd phase:フォーチュン500企業の20社以上の人事部とデータ収集のワークショップを行ってモデルをテストし,修正した.

コア・テーマ

3フェーズからなる研究の進行から,開発するモデルの基礎を提供する4つのコア・テーマが明らかになった.

  • すべての組織は学習システムである(All organizations are learning systems)
  • 学習は文化に従う(Learning confirms to culture)
  • 学習システム間でスタイルは様々である(Style varies between learning systems)
  • 包括的なプロセスが学習を促進する(Generic processes facilitate learning)

学習システムとしての組織のモデル

学習システムとしての組織のモデルは2パートからなる.モデルの両パートは学習システムとして組織を理解するために求められる.

  • Part 1 学習の指向(learning orientations):学習されたことの性質や学習が行われる場所を反映する価値観や実践.学習のスタイル,記述的.
  • Part 2 促進要因(facilitating factors):(1)学習の発生を簡単/困難にしたり,(2)なされる効果的な学習の総計,に影響を与える構造やプロセス.これらは一般的な問題を扱う上でのベストプラクティスに基礎をおく,規範的.

NevisらはさらにPart 1とPart 2の詳細なリストを提出している.

  • 7つの学習の指向(learning orientations)
    1. 知識の源:内部か外部か
    2. 製品・プロセスへのフォーカス:何を?どうやって?
    3. ドキュメント化のモード:個人的にかパブリックにか
    4. 普及のモード:公式にか非公式にか
    5. 学習のフォーカス:漸進的にかラディカルにか
    6. バリュー・チェーンのフォーカス:デザインか供給か
    7. スキル発展フォーカス:個人にかグループにか
  • 10の促進要因(facilitating factors)
    1. 要請の読み取り
    2. パフォーマンスのギャップ
    3. 指標への関心
    4. 実験的なマインド・セット
    5. オープンさの風土
    6. 継続的な教育
    7. オペレーショナルなバラエティ
    8. 多面的な支持者
    9. 関連するリーダーシップ
    10. システムの観点

10の促進要因において,制御あるいはサイバネティクスの観点から検討が可能な要因は(1)要請の読み取り,(2)パフォーマンスのギャップ,(3)指標への関心の3つある.

要請の読み取り

要請の読み取りは(1)ユニットの外部の状態や実践についての情報収集,(2)環境へのアウェアネス,(3)外部環境への好奇心を意味する.環境を正しく理解することが必要で,もし読み取り(scanning)の乏しいか限定的な努力であるならば,窮地へ陥ることがベストプラクティスとしてはMotorolaおよび Fiat,失敗例としては1970年代のIBM, Cray, Unysisがあげられている.

パフォーマンスのギャップ

パフォーマンスのギャップとは望ましいパフォーマンスと実際のパフォーマンスのギャップ認識を共有すること.パフォーマンスの不足は学習の機会であるとしている.もしフィードバックがギャップを示していたら,それに対する分析は新しい知見や技術を開発し,実験することを導く.パフォーマンスのギャップは(1)学習の必要性,(2)学習が機能していない,のどちらかを気づかせる.

指標への関心

指標への関心は,新しいエリアに挑戦するときにはキーファクターを定義・測定することに注力し,量的な指標を実現するため努力したり,学習活動としての評価指標(metrics)の議論を意味する.適当な指標を探索することやそれについての議論は評価指標が提供するフィードバックへの反応から現れる学習と同じくらい学習のクリティカルな側面である.

組織学習能力を向上させる戦略

Nevisらは組織学習を向上させる戦略として3つあげている.

  1. 学習の指向を改善する
  2. 促進要因を改善する
  3. 学習の指向,促進要因の両方を改善する

しかしながら,1から3へ行くにつれて,組織の抵抗が強くなると考えられ,より実現が難しくなるとしている.